1925年、生野祥雲斎は、師匠・佐藤竹邑斎から独立します。活動の初期である1920年代後半から1930年代前半にかけて、祥雲斎は茶道具の制作を行っています。精緻な編みで作られたこれらの作品は、鑑賞することも楽しい作品ですが、展覧会への出品や鑑賞をするためではなく、煎茶道において実際に使用することを目的に作られたものです。
一方、吉村正郎は綿布によって日用品の形をつくります。これらはもちろん使用することはできません。色彩を用いず、真っ白い布で作られたこれらの日用品をみるとき、私たちは普段は注意を払わない、日用品の「かたち」や布の材質に自然と注目することができます。
本展では、実際に使うことを目的にした祥雲斎の茶道具と、「かたち」や「素材」をみることだけに特化した吉村の茶道具を一緒に展示します。性格の異なる二つの"茶道具"をお楽しみください。