備前の壺。
その歴史上の特徴は、鎌倉時代から室町時代にかけて甕や擂鉢と共に多量生産され、西日本を中心に流通したことにあります。無釉焼締め陶の堅牢さという実用性は、備前焼にとって大きな価値で、当時の生活向上に尽くしたともいえるでしょう。
中世の備前焼を代表する壺はまさに力強く、純朴です。
それは桃山時代以降、生産が盛んになる茶陶製品の多様な造形・焼け色といった鑑賞性に勝るとも劣らない美質です。本展では備前の壺と共に国内窯業地の優品も合わせて展覧し、中世の一端をやきものの観点からご紹介します。
大地に根差し、健康的な逞しさと美しさのある「日本生まれのやきもの」をご堪能ください。