「古寺巡礼」は、土門拳が生涯をかけて撮り続けた彼の代表作です。若き日に出会った奈良の室生寺からはじまり、晩年まで実に40年間もの歳月をかけて、北は青森から南は九州まで百ヶ所以上のお寺を訪れ、仏像や寺社のたたずまいと向かい合いました。
自分の眼と心で美しいと思ったもの、感動したもの、好きになったものにのみレンズを向ける。じーっと見る、じーっと待つ、またじーっと見る、ぎりぎりまで集中して、そして撮る。これは、と思った仏像や寺は、自分の納得する写真が写るまで、何十回も通って撮る。決して妥協しない。それが土門流でした。
今回の展示では、土門拳が好きだった寺に焦点をしぼり、B全カラー作品63点を展示いたします。
力強く大きく堂々と捉えた画面、その気迫のこもった作品群に、我慢強く粘り強く対象に向き合った土門拳の姿が重なります。