横浜市在住の日本画家、益井三重子の展覧会を行います。
益井三重子(1910~)は、安田靫彦、小倉遊亀に師事し、1951年に日本美術院展覧会(院展)に初入選。以降院展を中心に人物画、静物画を出品し、1970年代には≪浜千鳥≫、≪小原女踊り≫などの優れた群像構成によって画業の頂点をむかえます。以後、明るく済んだ色彩、丁寧な筆致によって、安田靫彦や小倉遊亀ほか、さまざまな人物を活写していきます。人物にはゆかりの持ち物や愛犬、唐俑などが描き添えられることによって、その性格までもが表されているようです。
画家にとって、もっとも表現したいのは「気品」でした。気高くモダンな人物は現代を映し、クラシックな技法と相まって、益井様式として昇華しています。
本展では、こうした人物画に加え、生物画、歴史画、風景画、および益井に大きな影響を与えた二人の師、安田靫彦、小倉遊亀の作品をあわせた80点により、それぞれの真摯な画業をふり返ります。
大きな時代の変化によって、私たちの日常生活から隔たりを見せる「日本画」の今を顧みるとき、モダンとクラシックを合わせて現在をとらえる益井の手法は、日本画の今後を考える一つのよすがとなるのではないでしょうか。