アジア大陸の東端に位置する朝鮮手島には、長い歴史の中で高句麗(こうくり)、百済(くだら)、新羅(しらぎ)、高麗(こうらい)、朝鮮王朝などの国が建ち、中国大陸の美術などを受容しながら、独特な芸術文化がそれぞれの時代に築かれました。10世紀初頭に建国された高麗(918~1392)は、仏教を厚く信仰し、こんにち「高麗仏画」とよばれる、細緻で華麗な仏画などの優れた仏教美術を生み出したことで知られます。また朝鮮王朝(1392~1910)は、500年あまりにわたって半島を統一し、その間に多彩な書画や工芸などが生まれました。儒教を国教とし、政治の上で文官が力をもったことで、詩書画や書斎道具などの文人文化が栄えたほか、15世紀には、安堅(あんけん)をはじめとする宮廷画家達により、中国北宋の山水画を淵源とする荘厳な水墨山水が描かれました。更に素朴な味わいの民画や工芸、日本を訪れた朝鮮通信使ゆかりの墨画などがあります。
本展観では、朝鮮半島の歴史文化に育まれた様々な美術を、東アジアの国々との文化交流という観点からご紹介します。なお、陳列品のうち「漁村夕照図・平沙落雁図」は、2018年の修理後、初の一般公開となります。修理を経たことで、細緻な筆遣いや瑞々しい水墨の調子などがより鮮明に鑑賞でき、朝鮮王朝時代の水墨山水画の優れた技術をお楽しみいただけます。(担当 都甲さやか)