1959年1月、後にアラビア語の教授となる田中四郎氏(1921-2017)は、エジプトの地に初めて足を踏み入れ、カイロでの1年間の留学生活の合間に、当地に暮らす一般の人々が使用する、ありとあらゆる生活道具を収集し、当館にその品々がもたらされました。
本展は、63年の時を経て、選りすぐりの品々を初めて一堂に公開するものであり、1959年当時にエジプトで暮らしていた人々の日常を封じ込めた「タイムカプセル」を開くという試みでもあります。多種多様な展示品から垣間見えてくるのは、一昔前のエジプト社会の生き生きとした姿です。
アラビア語を話し、イスラームを信仰する人々の生活様式は、日本人と比べる場合、異なる部分がたくさんありますが、共通点も決して少なくありません。エキゾチックでありながら、ノスタルジックな雰囲気も漂う展示品を通じて、エジプト社会の根底にある基層文化や精神世界を感じとっていただければ幸いです。