近年、新しい文脈で工芸が評価されています。近代に入り西洋美術の概念が導入され、絵画や彫刻と異なるとみなされた表現が工芸と命名され分離されてから、その分野の作家たちは工芸について自問自答しながら新しい表現を目指して制作を続けてきました。
一方で評論家も工芸の在り方について研究を重ねてきましたが、交通網の広がりやインターネットの普及により、これまでの美術や工芸の概念が揺らぎ始めています。実際、最近では美術や工芸といったジャンルにこだわらずに、工芸素材と技術を用いて自身の表現を追求するという姿勢の作家が増えてきました。そして時を同じくして、専門外の評論家が注目し紹介することで、工芸作品の露出が高まっていきました。
本展は、東京国立近代美術館が所蔵する国内外の優れた工芸・デザイン作品を中心に、あえて工芸と括らずに「デザイン」、「現代美術」という二つの視点でご紹介する展覧会です。器からオブジェまで形状はさまざまですが、鑑賞者はジャンルを気にすることなく、工芸素材と技術を用いた幅広い表現に触れることができるでしょう。