「牧野良三―舞台美術における伝達と表現」を開催いたします。
本展では、長年にわたって舞台美術、ステージデザインを手掛けてきた牧野良三のこれまでの仕事を振り返りつつ、「形式が異なる時、どのように情報の差異を伝え視覚的に表現するのか」ということに注目いたします。牧野が実際に携わってきた仕事のうち、歌劇である「オペラ」と、より音楽に焦点を当てた演奏会形式の「オペラ コンチェルタンテ」という二つの形式で上演された演目の舞台美術の資料を対比させ、演出空間における視覚環境の可能性を探ります。
舞台美術とは「劇中で主人公が感情というフィルターを通して見る外の世界を、視覚環境として観客に示すことであり、演劇が表そうとする世界を舞台空間に定着させること」であり、「具象と抽象の両極を往復しながら、主人公が見る心的世界を舞台空間にまで拡張して表現し、演劇が表そうとする世界と観客がイメージを介してつながるための造形行為」であると、牧野は述べています。彼がつくり上げてきた舞台美術のデザイン画や設定資料の数々を追うことで、舞台美術の役割とは何なのかを改めて考える機会といたします。