美濃加茂市民ミュージアムでは、開館以来「芸術と自然」をテーマに現代美術家を招き、滞在制作の成果を発表する展覧会、市民と作家の交流の場を提供するワークショップなどを開催してきました。昨年開館20周年という節目を迎え、今年度は地域の作家に焦点を当てます。現在、美濃加茂市内に移住して工房を構える美術家の阿曽藍人(1983年~)を紹介します。
阿曽は土を素材として用い、屋内外でのインスタレーションを各地で発表してきました。作家が作り出す形は極めてシンプルであり、巨大な球体や正方形の薄い板など同じ形をいくつも並べ置くことで、緊張感のある洗練された景観を生み出します。それらは全て、豊かな土の質感を露わにしています。
土は含む水分量の違いによって大きく性質が変わります。作家は「土からやきものになるダイナミックな変容に寄り添い、対話を続けるうちに土が自らを語りだす」と考えています。阿曽が制作した作品のひとつひとつに異なる色、質感、表情が宿っています。その作品が置かれた空間に佇む者の意識は土そのもの、あるいは大地へと誘われてゆきます。
今回の展覧会では、森の中に立つミュージアムの環境を生かして、天、地、土、水、木を想起させるような空間構成を試みます。展示室内に土の柱と球体、木立の中には球体を配置し、屋内と野外に相似の関係を構築します。また、展示室には10mを超す大型の平面作品も展示します。会期中には森の敷地内で採った土を粘土にして、成形して焼くワークショップも開催いたします。
根源的な自然に寄り添いながら、見慣れた景色を美術の力で変えていく阿曽藍人の表現。作品を「経験」するように歩き眺める時間の中で、自分の記憶や心の内に在る「大地」を思い返す。そんな瞬間が訪れることを願い、この展覧会をお届けします。