浮世絵版画は、江戸時代の庶民が生み育てた絵画で、彼らの生活の諸相を主題としています。富山町では江戸時代後期に入ると、富山土産として断続的に版行されるようになり、天保(てんぽう)年間(一八三〇~四四)頃、売薬進物として取り入れられたことから、大量に版行されるようになりました。この富山浮世絵版画は、当時、絵紙(えがみ)や錦絵(にしきえ)などと称されていましたが、主な用途が売薬進物であったため、現在では「売薬版画(そらいがく)」と呼ばれています。
明治時代に入っても売薬業と歩みをともにし、二十年代には最盛期を迎えました。その頃、売薬版画は進物商や印刷業者などが版元となっており、富山の町には名前が確認できるものだけで二十軒近く営業していたことが確認できます。 江戸時代以来続く高見清平のほか、明治時代に入って創業した小泉重兵衛、吉尾達二、熊本甚四郎ら、この時期の版元たちは多士済々の顔ぶれです。
本展では、明治時代の版元に焦点を当て、売薬版画など五十点余りを展示します。 版元の仕事ぶりとともに、多種多様な明治の売薬版画を是非ご覧ください。