宮城県美術館の絵本原画コレクションの中核をなすのは、「こどものとも」(福音館書店)の初期の原画です。一つの物語を全て一人の作家が手がける月刊の絵本という、当時類のないかたちで1956年に創刊した「こどものとも」は、上質な美術体験を与える絵本づくりを目指し、そこには洋画家や日本画家、彫刻家、商業美術家、漫画家、さらには哲学者など、幅広い分野の作家たちが絵を寄せました。「こどものとも」は、編集者だけでなく、作家たちにとっても思い思いの表現を試す場であり、様々な技法や材質による自由な表現が現れました。そこからはやがて、オレンジ色の野ねずみ「ぐりとぐら」のイメージを生んだ山脇百合子、表現にデザインの美しさを取り入れたなかのひろたかなど、絵本を主な舞台として活躍する絵本作家も育っていきました。
2002-3年と2013年の同題の展覧会に続く本展では、宮城県美術館の約550タイトルある絵本原画コレクションの中から、「こどものとも」を語るに欠かせない人気作品はもちろん、今回初めて紹介する作品も多数含めて展示します。これら絵本原画の数々は、今日子どもから大人まで広く親しまれるものとなった絵本文化がかたちづくられるまでの、原点と歩みを語ってくれることでしょう。