19世紀の終わりに、フランスで生まれた印象派。彼らはそれまでのアトリエでの絵画制作から、キャンヴァスを屋外に持ち出し、自然の光のもとで描くようになりました。その結果、画面には光が溢れ、それまでの絵画の歴史上、最も明るい画面を創り出しました。
また描いた題材も、それまでの宗教や歴史の物語ではなく、身近な風景や市井の人々でした。中でもモネは精緻な自然観察のもとに、自然を光と色彩に還元し、それを画面に定着させます。それはシニャックやスーラらの点描技法へと繋がっていきました。一方、ルノワールは明るい光に触発され、透明感溢れる色彩による人物表現を追及し、瑞々しく生命感のある人間の描写に到達します。それは人間性に対する深い眼差しに支えられていました。このような人物表現に対する態度は、ボナールやヴュイヤールたちの人物表現にまで連なるものとなります。
この展覧会では、従来の漠然とした印象派観を整理して「風景画」と「人物画」という印象派の二つの流れを明確にし構成します。モネ初期の代表的傑作 《アルジャントゥイユの鉄橋》 やグレタ・ガルボ旧蔵でルノワールの名品 《青い服の子供》 をはじめ、彼らに連なる二つの潮流、つまり自然を描いたシスレー、ピサロ、スーラ、シニャックらと、人間を描いたロートレック、ボナール、ヴュイヤールらの日本初公開を多数含む名品約80点を紹介します。