当館の日本画コレクションの中で、特に20世紀後半の作品に焦点を当てた展覧会を開催します。当館では、画家のご好意による数多くの寄贈と購入を通じて、20世紀後半から現在にかけて活躍している画家のまとまったコレクションが形作られてきました。
来年白寿を迎える片岡球子は、当館の日本画コレクションの軸となる画家です。歌舞伎や舞楽といった伝統芸能に目を向け、日本史上の人物や浮世絵師を取り上げる「面構シリーズ」は片岡画伯のライフワークとなっています。モデルに注がれる深い愛情は、おおらかな構図と鮮やかな色彩となって、その独特の個性は画面に収まりきらず溢れ出てくるようです。
穏やかながらも自己の感性に忠実な作品を描く荘司福も、当館の重要作家の一人です。奈良県吉野に降るように咲き誇る桜花を描いた《櫻》には、やわらかな大気と時間の積み重なりが塗り込められています。
そうした画家のほかにも当館では、さまざまな画風を持つ日本画家たちの、質の高い作品を収集しています。
本展では、片岡球子とその同時代の日本画を展観することで、伝統と革新の葛藤の中で、現代人としての画家がかかえる思想や感覚がどのように織り込まれているかを考えます。