イラストレーターとして八面六臂の活躍をし、来るべき未来へ向けて20世紀を駆け抜けた真鍋 博。この度、ご遺族のご好意により、真鍋が手がけた雑誌、書籍の表紙や挿絵の原画を中心とした作品約8,000点を同県立図書館にご寄贈いただきました。今回、これを記念して目録を発刊するとともに、その膨大な作品・書籍・資料の中から一部を展示します。学生時代より気鋭の油彩画家として注目されていた真鍋 博は、一人でも多くの人に自らのメッセージを伝えることの可能な媒体として印刷メディアを自らの表現の場として選び、作品を発表してきました。その巧みな描写力とユーモアを取り入れた作品は数々の書籍・雑誌・新聞などに掲載され、イラストレーターの地位が確立していなかった時代において先駆的な役割を果たしてきたといえます。1960～70年代、高度経済成長期の只中で一大ムーブメントとなった未来学の世界に、真鍋の洗練された、それでいて親近感を抱かせる作品は合致し、未来図や、SF小説のイラストレーターとして欠かせない作家となりました。彼が描く世界は、あるべき未来の姿、人と自然との関わりにまで言及した社会批評的な内容を含み、現在われわれの思い描く未来像にも少なからぬ影響を及ぼしています。本展では、初期の油彩画に始まって、実験的なアニメーション、初期から晩年までのイラスト原画、真鍋が最終的な作品と考えていた印刷物にいたるまでの膨大かつ精密な仕事の一端をご紹介します。真鍋 博の豊かなイマジネーションの小宇宙に触れる機会となれば幸いです。
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