本展で紹介する4人のアーティスト、児玉靖枝、西條茜、牡丹靖佳、吉岡千尋による表現の基底には、存在の表裏をなす光と闇への意識、そして、そこに内包されるある種の「伝わらなさ」が横たわっています。
空に溶け入りそうな花の形や日に透ける葉の重なり、魅惑的な色彩と光沢を放つ器の肌、物語を予感させる色と形の連鎖。その背後に息づく、目に見えないもの、空虚な内側、全体に通じない欠片、記憶の空白…。目に映る〈光〉の世界の美しさを通して、その裏側、あるいは認識の働きに潜む〈闇〉の事象に目を凝らし、その輪郭をあぶり出そうとする彼らの作品は、不思議な透明感をまとい、見る者の感性を世界の深奥へと開いてゆきます。
人々が日常と生命の儚さを改めて知る一方、二極化する価値観や分かりやすさへの偏重を余儀なくされる今の世界で、光と闇の狭間にあって言語や意味に回収されることのない「伝わらなさ」を掬い取り、存在することの本質、光と闇の向こうから放たれる「もう一つの光」に触れようとする四者の試みにご注目ください。