群馬県立近代美術館には、戦争という人間の愚行を弾劾する表現として20世紀を代表する傑作、パブロ・ピカソ《ゲルニカ(タピスリー)》と、オシップ・ザッキン《破壊された都市》が収蔵されています。この展覧会では、現在ますます強く私たちにメッセージを投げかけるこの二つの作品を中心に、主に当館コレクションのなかから、戦争をテーマとした作品、あるいは戦争を背景に生み出された作品を展示します。 (作品総数 約60点)
パブロ・ピカソ《ゲルニカ(タピスリー)》 1983年
ピカソは、1937年4月、ナチス・ドイツによるスペイン、バスク地方の古都ゲルニカへの無差別爆撃に強い怒りを覚え、その直後からわずか1ヶ月あまりの間に大作《ゲルニカ》を描き上げました。この作品は、同年、パリ万国博覧会のスペイン政府館に壁画として展示され、第二次世界大戦の前哨戦となったスペイン内戦における惨劇を世界に訴えました。当館収蔵の《ゲルニカ(タピスリー)》は、《ゲルニカ》を原画としたタピスリー(綴織) 3点のうち、1983年に制作された第3作目にあたります。色糸は生前のピカソの指示にもとづき、灰茶色を主とした階調となっています。
オシップ・ザッキン《破壊された都市》1951年(鋳造は1956年)オランダの都市、ロッテルダムは、第二次世界大戦中の1940年5月、ドイツ軍の爆撃により壊滅的な被害を受けます。戦後オランダを訪れ、この都市の惨状を目撃したザッキンは、《破壊された都市》の連作を開始し、爆撃の記憶を後世に伝え、またそこからの復興を願う記念碑を完成させました。彫像の胴体は、破壊された都市中心部を象徴する巨大な空洞に貫かれ、両腕は、人間の救いを祈るかのように天に向かって突き上げられています。当館に収蔵される作品は、《破壊された都市》連作の最後に位置するもので、ロッテルダムに設置される記念碑は、この彫像の石膏像から拡大して鋳造されました。本作品は記念碑の除幕後、1956年に1体のみ鋳造され、長くザッキンのアトリエの中庭に置かれていたものです。
その他の出品作品
ジョルジュ・ルオー版画集『ミセレーレ』1922-27年(1948年刊行)
ジャン・フォートリエ 《黒い人質》1944年
ヴォルス《内蔵-心臓》(1962年刊行)
福沢一郎《敗戦群像》1948年
鶴岡政男《夜・・・