昭和10年11月、名取洋之助主宰の日本工房にカメラマンとして採用され、写真家としての道を歩き始めた土門拳は、日本文化を海外に紹介するためのグラフ誌「NIPPON」の仕事を中心に報道写真に取り組みました。
昭和12年、日本と中国は全面戦争に突入。日本全土がいやおうなしに戦時体制へと組み込まれていった時代です。
土門拳は、日本工房時代(昭和10~14年)と、続いて外務省の外郭団体である国際文化振興会にいた時代(昭和14~18年)と合わせて、戦争前夜そして戦時下の日本の姿を克明に記録しています。しかし戦後そのネガはずっと行方不明、あるいは土門自身が封印しており、およそ40年、または50年を経てから奇跡的に発見されたものでした。
今回展示する作品のほとんどは、これまで写真集などでは発表されたことがありますが、当館で、まとまったかたちで展示をするのは初めてのものです。今、こうした時代だからこそ、ぜひ多くの人に見ていただきたい作品です。