このたび多摩美術大学美術館では、沖縄を拠点に活動した美術家・真喜志勉(1941-2015)の足跡を辿る展覧会を開催いたします。真喜志はネオ・ダダやポップ・アートの手法も織り交ぜながら、沖縄の同時代を写し出す作風を切りひらきました。美術団体等には所属せず、1970年代以降ほぼ毎年個展を開催し、およそ50年にわたり新作を発表し続けました。
長い戦後を歩んできた沖縄において、真喜志の作品から沖縄が基地の島として晒されてきた社会背景を読み解くことができます。一方で、ジャズをこよなく愛した真喜志は、アメリカ文化への憧れも隠しませんでした。様々な要因がもたらす「複雑さ」も内包する表現は、時に飄々としたユーモアを持って、時にあふれんばかりの感情と緊張感を持って、見る人の心を揺さぶります。
本展ではその膨大な画業のなかから作家旧蔵の約90点を紹介します。沖縄県外で真喜志の作品をまとめて見ることのできる初めての機会となります。