鴨居玲が没して35年になろうとしています。鴨居は自己の内面を鋭くえぐり出し、全ての絵が自画像であるかのごとく、内部の燃えさかる光をカンヴァスに描き出しました。
1969年昭和会展優秀賞、続いて安井賞という輝かしい賞を受賞後、スペインそしてパリへ新天地を求め旅立ちます。スペイン、ラ・マンチャ地方では村の人々との交流を通し、多くの傑作が生み出され、のちの作品にも大きな影響を与えました。《私の村の酔っぱらい》《夢候よ》《廃兵》《私の話を聞いてくれ》《おばあさん》などの作品に自己を重ね、そして《教会》に神の存在を問いかけその不条理を形象化しました。混沌を極める現在、鴨居の絵は私たちに自己を見つめ立ち止まる大切さを問いかけてきます。一人ひとりの内面にある孤独、不安、または運命といった陰の世界を払拭せず、また愛に対しても正面から対峙した鴨居の絵を私たちは今必要としているのではないでしょうか。
本展では、没後35年を迎えるにあたり代表作約100点を紹介し、鴨居玲の世界をたどります。