美術館の展示室で、ポスターなどの印刷物で、もしくは画集や書物のページを開いて、出会う完成された絵画作品たち。画家がカンヴァスを前に、さてここまでと筆をおくその瞬間に至るまで、どれだけの時と力が費やされたことでしょう。ひらめき、ときに逡巡し、おそらくは喜び、また苦しみながらも、制作を進めてゆく―創作をめぐるたたかいともいえる試行錯誤が、その過程には存在していたはずです。
昭和の洋画壇で活躍した宮本三郎(1905-1974)は、作品を描くに至るまで、丹念にデッサンを重ねることを常としていました。また油彩画でも、自らの課題を繰り返し試行するように、同主題でモデルのポーズや構図を変えるなどして、制作をつづけました。
本展は、そうした制作の「過程」に注目して、宮本三郎の絵画を改めて見つめなおそうとするものです。