油彩だけでなく、すぐれた版画作品も制作した画家を、フランスでは “Peintre-graveur パントル・グラヴール(画家にして版画家)”と呼びます。ピカソ、マティス、シャガールといった、20世紀を代表する画家の多くがそうであったように、ビュフェも版画作品を多く制作した”パントル・グラヴール”でした。
ビュフェは、ドライポイントとリトグラフという技法で版画を制作しました。
銅版画の一種であるドライポイントは、銅板を、とがった道具でひっかくように彫って絵を描き、この彫った線にインクを詰めて刷る版画です。この技法では「線の画家」とも言われるビュフェの表現が活かされています。本展の冒頭で紹介する《モンマルトルのサクレ=クール寺院》はドライポイントの大作です。隣にはビュフェが彫った銅板(版画の原版)も展示しています。
リトグラフは、水と油が反発することを利用して、油性の画材で描いたところにのみインクがつくようにして刷る版画です。彫るという工程がないので、描いた線がそのまま表現されます。ビュフェの妻アナベルによると、リトグラフを制作するときのビュフェは、さまざまな色を使って遊び、子どものように楽しんでいたといいます。
本展では、ビュフェの版画作品を、モチーフ、テーマ別にご紹介します。
ビュフェの版画による表現をたっぷりとお楽しみください。