「夏休み企画<入門>アートの疑問」は、夏休みの小中学生に向けてこの時期に開催している毎年恒例の展覧会シリーズです。13回目となる今回は、本年が戦後75年目であることから美術作品を通じて平和をみつめます。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期となりましたが、本来であれば夏に開催されるはずだった東京オリンピック。その原点である古代オリンピックは戦争を中断して開かれていたともいわれ、現代ではオリンピックをスポーツと芸術文化からなる「平和の祭典」と位置づけています。
実は、1964年の東京オリンピックよりも前、戦前の1940年にも東京でオリンピックが開催されるはずでした。しかし、国際社会で孤立が進み、戦時色が濃くなっていた当時の日本では開催することができず、幻のオリンピックとなりました。この社会全体が戦争へと突き進む時代のなか、画家たちもその中から逃れることはできず、国民の戦意向上を狙ったいわゆる「戦争記録画」を制作するようになりました。それらの作品のうち主要なものは、終戦後にGHQによって集められ、アメリカへ送られたのち数十年を経て「無期限貸与」というかたちで日本に戻ってきています。GHQの命令のもと「戦争記録画」収集を実際に担当したのが、本市ゆかりの画家である山田新一でした。
本展では、所蔵作品を中心に100年前から現代までの絵画や彫刻約50点と山田新一が残した書簡や資料などを「平和と戦争」の観点から紹介します。
戦争体験を語れる人が少なくなってきた今、代わりに当時の状況を伝えてくれるのはその時代に生み出された作品や資料たちなのかもしれません。都城や南九州ゆかりの画家たちが、揺れ動く時代の中でどのように戦争と向き合っていたのか、その一端をみつめてみませんか。