東日本大震災から9年が過ぎようとしています。私が住む宮城では防潮堤の工事はまだ続いていますが、広範囲で整備されてきました。福島の町も、人が住むようになり大分雰囲気が変わってきたように思います。
私はこれまで高さ5M幅16Mほどの大画面で東日本大震災を描いてきました。その中の3点を神戸で展示した「加川広重巨大絵画が繋ぐ東北と神戸」(KIITO・2013-2015)、あれから5年近くが経ち、今度はギャラリー島田で、今描きたいことを表現します。
大規模な自然災害はほんの短い時間で、その場所で培って来たものを根こそぎ奪い去っていきます。すべてが片付けられた今になっても別の次元で、ずっとあの風景が続いているように思ったりもします。それは、被害の形は違えどもはるか昔から繰り返されている光景なのだと思います。
私はもう一度、撮影していた瓦礫の中にある生活の欠片を探したり、ずっと頭の中に残っている建築物をイメージしたり、被災地の現状から浮かんだアイデアを膨らませながら、自然災害から浮かび上がる人間や文明の儚さのようなものをギャラリー島田の壁面一杯に表現したいと考えています。 加川広重