石田智子は、紙撚(こより)を幾層にも重ね合わせて独自の世界を表出する美術作家です。彼女が作り出す幻想的な作品は、国内外で高い評価を得ています。
お寺に嫁いだ石田は、そこでの膨大な仕事を日々こなすなかで、紙撚による作品制作を始めます。参拝者が持参する想いのこもったお供え物の包装紙がきっかけとなり、制作の時間・素材・場所など、すべてが日常生活の営みと共存するかたちで始まった作業でした。そして紙撚ひとつひとつを織るように組み合わせ、展示空間を含めた大きな作品を生み出したのです。
石田の作品は、会場の特徴を活かしながら展示方法や演出を変えるため、ひとつとして同じものはありません。本展では、当館の空間をどのように変貌させるのでしょうか。展示室に広がる壮大にして静謐な世界をどうぞお楽しみください。