中国江西省にある景徳鎮窯は、宋代景徳年間に宮廷に納める磁器窯が置かれて以降、元、明、清代にかけて発展を続けてきました。明代には薄く透明感のある白磁胎にコバルトで絵付けをした青花磁器、清代では五彩や粉彩等の技法を生み出しながら、永らく中国陶磁の代表的な産地として、世界に名を知られてきました。
しかし、清朝の衰退とともに陶磁器生産も衰退しました。その後内戦、日中戦争の混乱期を経て、国営工場のもとで工業生産製品として新たに復興し、そのなかで、明清代の倣古作を中心に造られ始め、新たな展開を見せ始めます。
当館創設者でもある故 植野藤次郎氏は、中国美術にも造詣が深く、景徳鎮の陶磁生産のかつての隆盛を願い、当地における技術の継承と陶工の紹介を兼ねて、現地にて主に絵付け作家のコンクールを企画しました。そこでは、故 木村重信氏をはじめ、日本の陶磁等美術研究者・評論家・陶芸家を審査員とし、若手を中心に多くの作家を紹介しました。
当館では、植野氏及び植野アジア芸術文化振興財団から、平成6年の美術館開設と同時に、エンバ中国景徳鎮陶磁美術コンクール出展作家関連作品の寄贈を受け、現在まで館蔵品の核となっております。
これら陶磁器製作者については、エンバ中国(景徳鎮)陶磁美術コンクールの開催(平成2年から4年間開催)及び作品蒐集から25年以上経過し、景徳鎮陶磁生産の隆盛とともに、美術工芸大師(いわゆる日本で言うところの人間国宝)となった方も多く、また物故者も増え、現地でも作家の世代交代も進んできています。
本展では、開館25周年を記念して、コンクールに参加した現在活動中の作家の最近の作品と館蔵作品を比較して展示し、エンバ中国景徳鎮陶磁美術コンクールを回顧します。あわせて、現代の景徳鎮陶磁生産や若手作家の作品を紹介いたします。