絹谷幸二(きぬたに・こうじ)は、1943年、奈良県に生まれ、1966年に東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業後、同大学院で壁画を専攻し、アフレスコ(フレスコ画)の研究に邁進しました。1971年にはイタリアへ留学してヴェネツィア・アカデミアに入学、ブルーノ・サエッティに師事し、帰国後は、《アンセルモ氏の肖像》で画家の登竜門と言われた安井賞を当時の最年少記録で受賞します。アフレスコ技法による豊かな色彩と劇画の要素を絵画表現へ積極的に取り込むなど、エネルギー溢れる独自の画風を確立した。現代アフレスコ画の第一人者です。
現在、独立美術協会展(独立展)を主な発表の場としながら、国内外で数々の個展やグループ展を開催し、2001年、日本芸術院会員に任命され、2014年には文化功労者に選ばれました。また、文化庁と日本芸術院が行っている「子供 夢・アートアカデミー」にも積極的に関わり、日中観光文化交流団の団長として、国境を越えた文化交流においても重要な役割を担っています。
絹谷の描くモチーフは、人物、風景、静物などジャンルを問わず、古代から現代にいたる歴史的な出来事や事象を絡ませるなど実に多彩です。なかでも少年時代より描いてきた富士山は、制作の原点といえるでしょう。絹谷は富士山を「自然という作家が生み出した巨大な造形物、自然の意志によって生み出されたもの」として敬愛し、これまで数多くの富士山を描いてきました。
本展は、2013年、世界文化遺産に登録された日本の象徴でもある富士山を描いた作品を中心に、仏像、イタリアの風景や花などを描いた作品など、あわせて約70点により、さまざまなメッセージを読み解きながら、その画世界をご堪能いただくものです。