何処までも暗い画面に浮かび上がる貧しい人々や悲痛で過酷な運命を背負い、放心し、何かに憑かれたような表情。
ひりひりと心が痛み、触っただけで血が吹き出すような画肌。何気なくおかれた部屋の隅の酒瓶や香水瓶にすら、ただならぬ画家の魂のありように見える凄さ。そして哀しみに満ちた人々の中に聖なる永遠性が宿る。
身の置き所のない日本の画壇を捨ててパリ・ピガール界隈にアトリエを構え、下町の人々と交流し、自らの創造主のみを信じて暮らす。
彼の絵は、そのような中でしか描きようがなく、そしてそのように生きることは至難なのである。
その生き方、考え方、そして制作のすべてにおいて謎めき、ドストエフスキー的真実とアルバンベルグ的現代性を合わせもつ。
こうした魅力ある画家がまだ存在していた稀有を驚きまた喜びたい。
島田誠 -'99個展 案内状より-
ギャラリー島田が最も期待してきた画家、藤崎孝敏。6年前に拠点を東京に移されていますが、ギャラリー島田のコレクションである代表作に蒐集家の作品を+した充実した個展としてご覧いただきます。