タイトル等
李禹煥
全版画1970-2019出版記念展
会場
シロタ画廊
会期
2019-11-18~2019-11-30
休催日
日休廊
開催時間
AM11:00~PM7:00
(最終日のみPM5:00まで)
概要
李禹煥と版画
酒井忠康
李禹煥さんが、久しぶりに新作版画の個展をすることになった。その作品を見て、何か書いてほしい―といわれて、シロタ画廊を訪ねたのは、数週間前のことである。
越前雲肌麻紙に木版画で摺ったものだという。紙サイズが162×130センチもあって、机の上に平たくして見たので、額に入れて展示されたときに見るのとはちがうような気がした。眼を紙に擦りつけるようにして見ていたせいか、妙に生々しいものを感じた。
絵の具が紙の上に溶け出そうとしているのか、あるいは紙のなかに浸透して行って凝固しようとしているのか―ここには版画のもつ錬金術的な工程があるのだが、わたしのように見ているだけの者には、正直、事の芯のところが判らない。けれども、この作品は、これまでの李さんのものと、ちょっと感じが違う、というくらいのことは知ることができた。
それが生々しさの感覚を誘った理由であろう。いま塗ったばかりの絵の具の層に、鋭い刃物を立て、一気に横に切り裂いたような感じである。恣意にながれる感情の一切を堰き止める、まさに意志と精神による高次の業が、ここに結集されている。
いつだって(どんな場合でも)半端に妥協をしない李さんであるから、きっと木版画の究極の技術を要求したはずであろう。そうした李さんの探究心と摺り師との共同作業によって、この作品は見事なまでに新しい次元の版画となって出現したといっていいだろう。
こんどの個展は、「李禹煥全版画集 1970-2019」の出版記念を期してのことであるという。さぞかし刺激的な会場となるのは請け合うけれども、振り返ってみると、李さんとは長いつきあいになった。
ときどき想い返したように、李さんは版画制作に集中するのを見てきたが、あるときわたしの質問に、版画というのは、自分にとって絵画と彫刻の途中にある大事な拠点―と語ったことがある。
そのこととも関連すると思うのだが、李さんはまた、わたしとの対談(『版画藝術』99号、1998年)で、こんな話をしている。
版画制作の体験を通して知ったのは、自分以外の要素(媒体としての版画)を通ったときに、何か客観的に見られるもの、つまり普遍的なものにも繋がる仕事だと理解したし、ときにはタブローやドローイングよりも先に版画をやっていたこともある―と語っている。
こういうのを「自在」というのではないか、と思うのだが、どうだろう。
(美術評論家、世田谷美術館館長)
ホームページ
http://www.gaden.jp/shirota/2019/1118/1118.html
会場住所
〒104-0061
東京都中央区銀座7-10-8
交通案内
銀座駅 A3出口より 徒歩約5分
東銀座駅 A1出口より 徒歩約5分
新橋駅 1出口より 徒歩約5分
ホームページ
https://shirotagallery.com/
東京都中央区銀座7-10-8
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