明治の半ば頃から、美しい文体による幻想的な名作を多く生み出し、人気を集めていた泉鏡花。清方は、挿絵画家となった10代の頃から鏡花の文学を愛読し、彼の作品に挿絵を描くことを目標に研鑽を重ねました。
明治34年(1901)、23歳のとき、鏡花の単行本『三枚續』の口絵や装丁を手がけることになり、ついに対面を果たします。初対面で旧知の仲のように打ち解けたふたりは、公私にわたり親交を深めます。そして、鏡花文学への深い理解により口絵や挿絵を制作し、「鏡花作、清方ゑがく」と扉に並び記されるほど美しい本をふたりで世に送り出しました。後に清方が日本画家となってからもふたりの交流は続き、鏡花の小説に取材した日本画作品や、鏡花作品の舞台化にあたり絵看板や衣裳を手がけるなど、鏡花の文学の世界を描きました。
今秋、泉鏡花の没後80年を迎えることから、ふたりの深い関わりを示す作品をご紹介します。