むかし、むかし、一千年もの昔。雅な王朝文化の栄える平安の都では、鬼や妖かしが彷徨う闇の世界が信じられていた。それを恐れる朝廷や貴族たちの拠り所こそ、古代中国の陰陽・五行思想に由来する、陰陽道だった。陰陽道は明治政府によって禁じられたが、節分などの年中行事や習慣が、その名残りを今に伝えている。陰陽道に基づいて、呪いや占い、祭りを行う人々を陰陽師という。なかでも、並はずれた才能を発揮して大活躍したのが、平安時代の“スーパースター”陰陽師安倍晴明だった。晴明伝説は時代とともに広がって、浄瑠璃や歌舞伎、能にも登場する。そして現在ー。様々なメディアを通じて紹介される安倍晴明、陰陽道への感心が高まっている。その背景にあるのは、現代人が抱く、超人的な力や不可思議なものへの憧れかもしれない。
本展覧会では、国宝・重要文化財を含む絵画、彫刻、古典籍などから、晴明の実像や陰陽道の全容について紹介するとともに、小説の挿絵、漫画、映画を介して現代の安倍晴明像に迫る。