見たことのある光景
19世紀の写実主義の画家クールベが言ったとされる「天使は見たことがないから描けない」という言葉。
この言葉の美術史的解釈はさておき、僕はこのセリフに勝手に共感した覚えがある。
べつに天使を描いたって、怪獣を描いたっていいのだが…。
見たことがないものは描かないという姿勢が明快でクールに思えた。物語ではなく絵そのものを表現できる気がしたのだ。
僕は今、ありふれた日常を素直に描写しようと絵画制作に取り組んでいる。
制作方法は素直ではないが、余白や写実、線描など様々な要素を扱って、「見たことのある」光景を描写している。 美崎 慶一