絵本界の鬼才と呼ばれた画家・瀬川康男。1977年、都会の喧騒からはなれ、群馬県の北軽井沢に移り住んだ瀬川は、植物や動物の写生に没頭します。自然が生み出す形と向き合うなかで、黒いノートに、日々の所感や絵に関する思いを記しました。
1982年、瀬川は長野県の青木村入奈良本(いりならもと)の古い大きな家に居を移します。「坦雲亭(たんうんてい)」と名付けたこの家で、友人や愛犬たちとの交流を深めながら、自作の絵本や壮大な歴史絵本『絵巻平家物語』シリーズなどを生み出していきました。この時期から「坦雲亭日乗(たんうんていにちじょう)」と題した日記を書き始めます。晩年まで記し続けたこの日記には、画家が生きた時間のすべてが記録されています。
本展では、日記「坦雲亭日乗(たんうんていにちじょう)」やノートに綴った画家のことばを手がかりに、絵本原画、タブロー、スケッチなどの作品を展示します。「絵をつかまえて生きようと思った」と語った画家・瀬川康男の絵にかけた思いと人生に迫ります。