ユーモア溢れる筆致で描く禅の真理を表現する書画
江戸時代に活躍した臨済宗の禅僧・白隠と仙厓。両者ともに、衆生済度(迷いの苦しみから衆生を救い悟りの世界に渡し導く)の精神で、禅の普及に努めました。そして禅の教えや体験を時に厳しく、時にわかりやすく伝えようと、数多くの書画を残します。彼らの描く自由で豪放な書画は、一見するとユーモア溢れる筆致で描かれていますが、そこには禅的真理の様態が表現されているとともに、痛烈な社会諷刺や謎掛けといった様々な仕掛けが散りばめられています。白隠は釈迦や達磨などの仏教尊像をはじめ、布袋などの民間信仰にもとづく様々な書画を手がけています。その中でも特徴的なのが、古典や禅録のみならず当時流行した謡曲や狂言歌謡まで、様々な賛が加えられているところです。「画(絵画)」と「賛(言葉)」、2つの要素から構成されることで、「形を超えた」禅の真理を表現することに成功したのです。一方、仙厓の手がけた書画は、白隠同様に仏教や民間信仰の神々は勿論のこと、庶民のくらしを描いた風俗画に至るまで、聖俗あらゆるものがモチーフとして描かれています。「世の中の絵画には法があるが、仙厓の絵には法は無い」という「厓画無法」を宣言したように、様々なモチーフを用いて、白隠よりも親しみやすく禅的真理を視覚化したと言えます。本展では、現代人にとって単純に「ゆるくてかわいい」と思える彼らの書画から、本来伝えるべきそのメッセージを読み解くことで、禅画(ZENGA)の魅力をご紹介します。