20世紀フランス絵画の巨匠ジョルジュ・ルオー(1871-1958)は、塗り重ねられた鮮やかな色彩と特徴的な力強い黒の線を用いて、サーカスの道化師や労働者、聖書の主題などをモティーフに独自の世界を描き出しました。また色彩や線といった造形の新しさもさることながら、人間が普遍的に抱く苦悩や哀しみに向き合い、その向こうにある生命の輝きを見つめ続けた点でも、ルオーの作品は、時代や地域、宗教の違いを超え、現代の私たちの心を揺さぶります。
本展では、世界でも有数のルオー・コレクションで知られるパナソニック汐留美術館の所蔵作品から、油彩や版画など約100点をご紹介します。師ギュスターヴ・モローの影響を大きく受けた初期作品《ゲッセマニ》から、深みのある画面に輝くような色彩がちりばめられた晩年の傑作《マドレーヌ》まで、60年以上にわたる画業をたどり、その魅力を明らかにします。