本展では、「呉に生まれる」「呉で活動」「呉を描く」など当館が所蔵する「呉」ゆかりの43作家の作品により、戦前・戦後から現代にかけての呉美術の諸相を紹介します。
南画の伝統を近代に伝えた手島呉東(1862~1936) 、戦前日本洋画界の巨匠・南薰造(1883~1950)を筆頭に、朝井清(版画、1901~1968) 、長田健雄(水彩画、1901~1940) 、宇根元警(油彩画、1904~1970)らが中心となって戦前における呉美術の基礎が築かれ、藤川九郎(水彩画、1912~1991) 、生田正雄(水彩画、1907~1999) 、空野八百蔵(油彩画、1916~1993) 、船田玉樹(日本画、1912~1991)らが加わって呉美術協会が設立されるなど戦後美術の復興が図られました。その後、現代にかけては、抽象画に屹立する作風を打ち立てた岡部繁夫(1912~1969) 、木版画と木彫に独自の境地を切り拓いた水船六洲(1912~1980) 、数奇な運命を辿ってメルヘン画家として大成したミネ・クレイン(1917~1992)など、そして、野呂山芸術村に集まった日本及び世界各地の画家たちが、多彩な花を咲かせました。さながら日本近代美術史の縮図のようなバラエティに富んだ技法・素材・表現法による密度の高い作品群、そして呉ならではのテーマをお楽しみいただけます。
また、本展では、今年度当館で高校生キュレーターとして活動した高校生たちが推奨する作品を交えて展示します。ご来館の皆さまには、美術を通してあらためて郷土・呉に向き合っていただきながら、高校生たちとともに呉美術の宝物を見つけていただければ幸いです。