本展は、東京国立近代美術館工芸館が所蔵する工芸作品を効果的に活用し、広く地域の鑑賞機会の充実及び美術の普及を図るとともに、地域の文化振興に貢献するため、東京国立近代美術館工芸館巡回展事業として開催するものです。
日本の工芸品は、特に明治時代、欧米における熱狂的な日本ブームにのって、海外へ大量に輸出されていきました。明治政府は、殖産興業及び外貨獲得という目的から、この動向を支持し、工芸を重要な輸出品目と位置付けて、工芸品制作を奨励しました。
こうして、技巧を凝らした、類い稀な作品群が次々と生み出され、世界に冠たる日本近代工芸の発展の基礎が形成されたのです。
その後、その技を受け継ぎながらも、工芸品制作の中に自らの個性を見出そうとする作家たちの登場や、美術工芸団体の設立などにより、日本の工芸は、伝統と創造性が融合され、まさに現在、それらが昇華した姿として確立されています。
本展では、こうした日本の近現代工芸の技と伝統と歴史、そしてそれらから生み出された「美」をご覧いただくため、東京国立近代美術館工芸館の膨大な所蔵品の中から、陶磁・ガラス・漆工・竹工・染織・人形・金工の各分野を代表する珠玉の名品を展示します。これらの作品群を通して、世界でも高い評価を受けている日本の近現代工芸の神髄に触れていただければと思います。