フランス現代美術界の巨匠ダニエル・ビュレン(1938年-)は、縦のストライプを用いた作品で世界的に知られる作家です。彼は1960年代後半から、一貫して8.7センチ幅のストライプを様々な場所に掲示し、その鮮烈な色彩によって周囲の空間や場を意識させる作品を発表してきました。
ビュレンの作品に共通するテーマ-それは、作品が展示される「場所」への問いです。例えば、ものごとの意味が周囲の文脈から判断されるように、彼は美術作品の意味はあらかじめ固有に存在するのではなく、場所との関係のなかで生まれるものだと考えています。それゆえビュレンは、個々の場所の特性を分析的に読み解き、その要素を取り込みながら作品を構想してきました。
本展覧会は、豊田市美術館の屋外テラスと館内の複数の展示室を会場に、約15点の作品を紹介するものです。ダニエル・ビュレンは美術館の建築とのコラボレーションを試みました。鮮やかな光に彩られた空間のなかで、彼の作品はこの美術館の空間概念と芸術に対する私たちの意識に、新たな視座を与えてくれることでしょう。