世界各地の美術館における個展開催並びに国際展への参加が続く草間彌生(1929-)は現在最も活躍しているアーティストの一人であると言えるでしょう。関西、中国、四国エリア(*西日本)ではその開催が待望されていた初の個展が丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催されます。
草間彌生の作品は絵画、版画、ソフト・スカルプチャー、ファッション、家具など多岐に渡ります。長野県松本市の素封家に生まれた草間は、幼少時に抱えたオブセッションによる幻覚体験から絵画を描き始め、京都の美術学校で日本画を学んだわずかな期間を除き、ほぼ独学で絵画を習得します。1957年に渡米、73年に帰国するまでニューヨークに滞在し、ミニマリスムやポップアートの先駆けであると評される画面に限りなく増殖し密集した斑点や網目のペインティング「ドット・ペインティング」「ネット・ペインティング」、周囲が布製の男根状突起物で埋めつくされた家具、鏡で囲まれた部屋のインスタレーション「ミラー・ルーム」を制作するなど、草間芸術の基本的な概念となる解体と集積、増殖と分離がここに表現されます。またパフォーマンスや映画製作、小説の執筆などもよく知られています。
草間は、<人は何であるかということの生死の境目で闘っている私の芸術にとって、生きることと死ぬことはどういうことであるかという場で作りつづけている私の芸術>と自らの芸術について語っています。本展覧会では、渡米前後に制作された日本未公開のドローイング作品約80点やシルバー単色に彩られた立体作品、映像、また今展のために制作された新作等、計約100点を展示し、草間彌生がその制作活動を行う上で見せる圧倒的なエネルギーの中で迷い、闘ってきた<生と死の相克、魂の希望と失望>を迷路のような展示空間に現出します。草間芸術に対峙し「迷宮の彼方に」あなたは何を見出すでしょうか?