吉野石膏日本画コレクションは、石膏建材メーカーとして知られる吉野石膏株式会社と2008年に設立した吉野石膏美術振興財団が形成したものです。コレクションは、吉野石膏株式会社の創業地である山形県内の美術館に寄託されています。このたびの公開は山形以外では初公開となる貴重な機会です。
吉野石膏コレクションの中核をなす近現代日本画には、人物、花鳥、風景と多彩な作品が所蔵されています。中でも上村松園(1875-1949)と前田青邨(1885-1977)の作品群には秀作が多く、特に松園の《青眉》(1934年)は、同年に亡くなった松園の母への思慕が、揺るぎない筆致によって昇華された、清廉で格調高い美人画です。また青邨の《洞窟の頼朝》は、箱根山中の洞窟に身を隠す源頼朝と臣下の群像表現を圧倒的な技量でドラマチックに描き出します。その他、大正期の優れた細密表現を示す速水御舟(1894-1935)《双鳩》や、東山魁夷(1908-1999)、奥田元宋(1912-2003)ら風景画の名手の優品など、近代から現代に至る26名の作家による58点の作品から、日本画の幽玄なる世界をご堪能下さい。