希望の絵画
音楽家に言われた「天上にさす光のような響き」の言葉に導かれ、画家は可視光ではない、心に響く光に考えをめぐらす。人は目に見える世界をすべてと思い込むが、それは人間が感知している宇宙の一部にすぎない。
私たちの世界とは、もともと目には見えない光に満ちている。黒いピグメントで覆われた地に、水晶末や胡粉の粒子で白い光の像を描く。そのたおやかな姿は、宇宙の中心から放射する光線ではなく、揺らぎを伴いながら開示を予感させる光の影のよう。山口健児の最近の仕事は、どんな暗闇にも真の光は隠れていることを教えてくれる、希望の絵画なのだ。 武居利史(府中市美術館学芸員)