橋本章(はしもと あきら・1919-)は、人間・社会・文明をテーマに独創的な絵画やオブジェを制作する福島県伊達町在住の画家です。自由美術展、主体展などの団体展での活動をはじめ、第二次大戦後早くから福島青年美術会、新作家グループなど同志と結成し、県内前衛作家のリーダーとして活躍してきました。
橋本の作品の魅力は、幻想性とオブジェそれぞれに独立した70年代以降の抽象作品へと次第に作風は進化を遂げますが、そこには哀愁に満ちた滑稽な人間の姿が一貫して描かれてきました。それは、急激な物質文明を推し進めてきた現代社会への警鐘であるとともに、変貌する時代の中で翻弄され、失われてきた人間性の復権とも捉えられるでしょう。本展は、この60年以上に及ぶ橋本のユニークな画業を、初期から新作までの油彩、水彩、素描、オブジェ約150点によって回顧するものです。