やきものは、人類が化学変化を意識的に応用し、生みだしたといわれていますが、現在に至るまでには、形や色合い、装飾などにさまざまな技術が取り入れられ、変化してきました。やきものの製作過程を紐解いてみると、素材となる粘土や陶石などを採掘し、不純物を取り除いて精製したのち、成形作業へと進み、乾燥期間を経て、焼成が行われます。成形された器面に装飾が加えられることは、やきものが誕生してまもなく始められており、そこには本来の実用的な機能に彩りを添え、飾り付けることで、呪術的な意味合いや独自性あるいは地域性、物語性、時代性、流行り、遊び心など、つくり手によって創意工夫された美意識の一端が表現されています。
一昨年に開催した、「やきものを分析する―釉薬編―」では、器面を彩るさまざまな色合いを生みだす釉薬に焦点をあて、それらの成分を化学的に分析するとともに、生成状況や焼成方法などの再現を試み、基本的な知識に専門用語などを交えながら解説することで、釉薬の複雑さや奥深さを感じていただきました。
この展覧会は、釉薬編に続く第2弾「装飾編」として、器面をカンバスに見立て、写実的あるいは図案化して描かれた染付や色絵付け、釉薬による色彩豊かな色付けなどの平面的な装飾に加え、器面への彫り込みや貼付け、型を用いて動植物などをかたどった立体的な装飾など、多彩な装飾技法を当館の古陶磁および、現代陶芸コレクションを中心にご紹介します。また、装飾の歴史や特徴、技術的な側面などを、探ることによって、生活道具のひとつであるやきものの多様性や、そこに込められたつくり手の思いにも迫ります。