有島武郎:生れ出づる悩み
近代日本を代表する文学者のひとり、有島武郎(1878~1923)の小説『生れ出づる悩み』は、1918年に発表され今年で出版100年を迎えます。そこには、小説家「私」と青年画家「木本」の出会いと交流、そして互いが抱える創作の苦しみが綴られています。
小説家と画家の巡り合い
この小説のモデルとなったのが、北海道の画家・木田金次郎(1893~1962)です。有島と木田は、1910年に札幌で出会い交流を重ねました。そして、有島は木田の姿に触発されて一編の小説をまとめ、一方、木田は有島から薫陶を受けながら絵画の道を進んでいきます。
木田金次郎:北海道・岩内で描く
木田は有島から、生まれ故郷であり地方の漁村である北海道・岩内で活動することを強く勧められました。1954年には、それまで描いた1500点あまりの作品を大火で失いますが、これ以降も同地で制作を続けます。にぎわう漁港や波しぶく岩場を、奔放な筆遣いと鮮烈な色彩でとらえた岩内の景色は、この地で過ごした木田だからこそ 描きえたものでしょう。
人はなぜ描くのか?
この展覧会では、画家・木田金次郎の生涯を80点の作品によりたどります。さらに、小説家・有島武郎、『生れ出づる悩み』に触発された北海道の若手美術家、福井で炭焼きをしながら描き続けた孤高の画家・渡邊淳らの作品をあわせて紹介します。苦悩と歓喜に彩られた、芸術家たちの創造の軌跡をご覧ください。