浅野弥衛(あさのやえ/1914~1996)は三重県鈴鹿市に生まれ、この地方の現代美術の草分けとして活躍しました。浅野の作品は、おもに油絵の具で下地を丹念に塗った画面に線を引っかき、そこに絵の具を塗り込み、ふきとるという独特の技法で生み出されています。画面に刻まれた線は、詩情あふれる世界となって瞬く間に私たちを包み込み、作品はまるで線で描かれた詩のように感じられてきます。
本展はそのような浅野弥衛の作品を、永見隆幸コレクションと名古屋市美術館の所蔵品によって紹介します。油彩だけではなく鉛筆やパステル、オイルスティックなど、さまざまな技法によって生み出された作品からは、作家の表現の多様性を感じられるだけでなく、時には表現における作家の素顔のようなものを垣間見ることができます。線の表現を探求し続けた浅野弥衛の芸術をお楽しみください。