古今東西の画家たちは、海辺や山河を主題にした風景から身の回りの草花まで、あらゆる自然の姿を画題として
取り上げてきました。彼らは人の手が加わらない自然界の造形と色彩に魅せられ、そこに宿る美しさや生命力を画
面に定着させようと、さまざまな画材屋技法を使って制作を試みました。
本展では、画家の眼差しが捉えた自然の諸相を、日本画、油彩画、水彩画、素描など、幅広いジャンルの中から
ご紹介します。四季折々に移り変わる季節とともに、さまざまな表情を見せる自然の姿からは、対象を見つめる画
家の心情や独自の自然観を感じ取ることができるでしょう。
現在、私たちが生きる社会は、森林伐採や大気汚染などに代表される環境問題によって、地球規模の危機に直面
しています。画家たちが賛美した自然の姿は、急速な社会の変化とともに失われつつある存在となりました。自然
に心を寄せ、対象と真摯に向き合いながら制作された作品は、自然と人との関わり方を改めて気づかせてくれま
す美術を通して、かけがえのない自然の美しさを感じていただく機会となれば幸いです。
出展作家:奥田元宋、南薫造、小林和作、小寺健吉、中村琢二、三上巴峡 ほか