信楽・備前・伊賀の大胆な篦目(へらめ)と歪(ゆが)み、志野の白釉に浮かぶ力強い鉄絵、織部の多彩な形と爽快な釉薬の掛け分け、そして唐津の自由な文様表現。16~17世紀初頭に作られたこれら「桃山の茶陶」は、唐物(からもの)にはない和物(わもの)茶陶ならではの魅力に溢れ、日本を代表するやきもののひとつとなっています。
根津美術館では平成元年(1989)に、「桃山の茶陶」展を開催しました。それからおよそ30年が経過し、その間、研究も著しく進展しました。最も大きな発見は京都三条瀬戸物屋町と、それを営んだ商人たちの存在です。この時代に、現代の私たちが見ても斬新に感じるデザイン感覚を備えた茶陶が大量に誕生したのは、顧客の変化と増大を背景とする新たな流通ルートが作られたからでもあるのです。
本展覧会では「生産」と「流通」という観点から、伝世品とあわせて、京都で出土した資料を通し、最新の桃山の茶陶の世界をご覧いただきます。