陶芸家・前野善樹さんは学生の時に陶による造形作品に出会い、いわゆる大皿や壷ではなく、粘土の質感を活かした柔らかく自由な表現に心を奪われました。大学を卒業すると、その作品の作者である陶芸家・高光一成さん(昭和10年~、日展会員)に師事し、現在は故郷の日立市にて制作、日展と日本新工芸展を主な発表の場としています。
前野さんは、表面に吹き付けた化粧土で赤く乾いた土の風化したような質感を出し、砂漠の中に蜃気楼がゆらめく異国の古い街の建物を思わせる造形作品を制作しています。入り組んだ建物の窓や雲を表した部分には孔が開けられており、前野さんはその複雑な構造を紐づくりの技法で下から粘土を積み上げ造り出しています。
今展は、前野さんの優品25点を二期に分けて展示します。