今から120年前の1898(明治31)年1月、小林袈裟治(けさじ)という一人の男が須坂の地に生をうけます。のちに彼は「朝治(あさじ)」と名乗り、多くの作品、とくに版画作品を世に遺すとともに版画作品の収集にも努めました。
須坂では木版画を中心に創作活動をおこない、絵を描くことや版を彫ることへ人一倍の情熱をもって取り組みました。1931(昭和6)年秋には、信濃毎日新聞主催の美術展(信毎展)に『鶴之図』が入選。展覧会を企画開催したり、美術グループ・十人社を結成するなど、創作意欲は途絶えることがありませんでした。
須坂版画美術館の核たる作品は、朝治が全国各地の版画家たちと交流し、収集した版画作品から成ります。これらは「朝治コレクション」と呼ばれ、2000点近い版画作品が寄贈されました。早世したために、画家としては生前広く知られることはなかった小林朝治。この度の記念展では、地元愛あふれる風景版画や可愛らしい郷土玩具版画など、彼の版画作品と「朝治コレクション」の名品をご紹介します。