秋田市の資産家・平野政吉が長年にわたり収集した美術品は、1960年代後半から、東京をはじめ日本各地を巡回しました。この公開により、平野政吉コレクションが全国的に注目されるようになり、秋田県内では、そのコレクションを展観する美術館を建てようという機運が高まります。秋田市の千秋公園の一画に、国費と県費、平野の出資、それに一般からの寄付金も加えて美術館が建設され、1967(昭和42)年5月5日に開館します。この秋田県立美術館は、平野の収集品、とくに藤田嗣治の作品が常設展示されている美術館として全国的に知られ、県民にも親しまれてきました。2013年(平成25)年には現在の建物に移転しますが、本年で開館50周年を迎えます。
また、本年は、藤田が1937 (昭和12)年に壁画《秋田の行事》を完成させてから80周年にもあたります。この作品は秋田に建設が予定されていた藤田美術館の壁を飾るために描かれた壁画です。壁画制作のために来県した藤田から、平野はゴヤ『闘牛技』や南米の宗教画を入手しました。以降、平野は西洋美術にも目を向け、平野の夢は世界の美術を網羅する美術館の建設へと広がります。その後、30年の時を経て、平野の夢見た美術館が秋田県立美術館として開館したのです。
本展では、平野の夢の軌跡を、藤田との交流を物語る資料、収集した絵画、平野家に遺された写真等で辿り、平野の功績と平野政吉コレクションの意義を検証します。