九州地方の陶磁器は、朝鮮半島から窯業技術が導入されたことにより、飛躍的な発展を遂げてきました。その背景には九州諸大名の茶の湯への関心があり、中でも伊万里焼や唐津焼などは近世以降日本中に名が知られ、その他にも九州各地で多くの優れた窯が育ちました。
柳宗悦(一八八九-一九六一)をはじめとした民藝運動の同人達は、御用窯として開窯した窯に限らず、日常の器を生産していた民窯にも注目し、独自の審美眼で広く九州の陶磁器を紹介していきました。とりわけ、小鹿田(おんた)焼(大分県)、小石原(こいしはら)焼(福岡県)、小代(しょうだい)焼(熊本県)などの陶器は、日本民藝館で開催される、新作工芸品の公募展である日本民藝館展で、用と美を兼ね備えた優れた作品として高い評価を受けてきました。
本特別展では、一九六八年から一九七〇年代の日本民芸館展に出品された小鹿田焼や小石原焼の優品をはじめ、力強い流掛が魅力の小代焼の皿、多彩な模様の古伊万里そば猪口など、当館が所蔵する九州地方の陶磁器を中心に、編組品、染織品も併せて約一〇〇点を展示します。こうした陶磁器は、現在にも続く窯場で生産され、人々の生活を豊かに彩ってきました。過去から現在へ受け継がれる技と、伝統から芽生える新しい美の世界をご覧ください。